これからの季節、空気が乾燥してくると静電気が起こりやすくなります。製造現場において、様々なトラブルの原因となります。特に、乾燥した環境下では静電気が発生しやすく、その結果、機器の故障や製品の品質低下、電撃によるケガなどのリスクが高まります。このような弊害を未然に防ぐためには、適切な静電気対策が不可欠です。本コラムでは、製造現場における静電気の発生メカニズムとその対策方法について詳しく探ります。
目次
静電気発生のメカニズムについて
静電気とは何か?
静電気とは、物質が摩擦や接触・分離などの動作によって電荷を帯び、不均衡な電気状態になる現象です。工場では絶縁体の素材や製造工程の特性上、静電気が発生しやすくなります。静電気が蓄積すると、機器の誤作動や火災の原因になるため、理解と対策が重要です。
静電気発生の主な要因
工場内で静電気が発生するメカニズムは、以下のような要素によって促進されます。
●摩擦・接触と分離
異なる材質の物質が接触し、そこで電子の移動が起こります。その後、物質が離れる際に一方に電気が残り静電気が発生します。例えば、プラスチック製品の搬送中にベルトコンベアとの摩擦で静電気が発生することがあります。
●材質の特性
絶縁体は電気を通しにくく、一度帯電した電荷が逃げにくい特徴があります。工場で多用されるプラスチックやゴム、樹脂製品は静電気を起こしやすい素材です。
●環境条件
空気の湿度が低いと静電気が発生しやすくなります。湿度が高い場合は空気中の水分が電気を逃がすため静電気の溜まりにくい環境となります。乾燥した冬季に静電気トラブルが多発するのはこれが理由です。
●作業工程の動き
生産ラインでの高速な搬送や機械同士の接触、粉体やフィルムの扱いなど、静電気を発生しやすい動作が多く含まれます。
工場における静電気対策
工場では、多くの機械や製品が静電気の影響を受けやすい環境にあります。静電気が原因で電子機器に障害が起きた場合、生産効率の低下につながります。また、火災や爆発などの大きな事故につながる可能性があります。そのため、適切な静電気対策を講じることは非常に重要です。
工場において効果的な静電気対策は以下の通りです。
1. 適切な湿度管理
空気の湿度を40~60%に保つことが理想的です。これにより、静電気の蓄積を抑えやすくなります。加湿器の設置や空調設備の見直しが効果的です。
2. 導電性のある床材・靴の使用
導電性の床材を使用すると、帯電した電気を床に逃がしやすくなります。これにより、作業者や製品に静電気がたまりにくくなります。また、導電性のある靴や靴底を使うことで、体にたまる静電気の放電を促進します。作業者が安全に移動できる環境づくりに役立ちます。
3. 機械や設備のアース接続の徹底
電気を逃がすために、すべての機械や設備を確実にアースに接続します。これにより、静電気が溜まらずに放電され、機器のトラブルを防げます。
4. 静電気除去装置の設置
イオナイザーや静電気除去ブラシ、マットなどの導入でも対策ができます。イオナイザーは空気中のイオンを発生させ、帯電した物体の電気を中和します。特に搬送ラインや電子部品の製造工程に適しています。また、作業エリアに静電気を除去するマットやブラシを用いることで、局所的な帯電を減らすことができます。
5. 作業服に静電気防止素材を選定
綿や特殊な繊維を使用した静電気防止作業服を着用することにより、人体への静電気の蓄積を抑制できます。
6. 教育とメンテナンスの徹底
静電気の発生原因や対策方法について、作業者へ定期的に教育を行い、理解を深めてもらうことが重要です。また、静電気対策機器や接地システムの定期点検を行い、確実に機能しているか確認します。
おすすめの静電気対策商品
■静電気除去ミニファン 微風タイプ F-6BF

卓上で使用できる小型ファン型イオナイザー。不快な風をカットする微風仕様のため、埃や塵を拡散させずにイオンを届けることができます。イオンバランス±10V以内で、誤動作を招くESD対策に有効です。
■イオンパーツクリーナー IPC-200,400,600

ワークの除電・除塵・集塵がこれ一台でできます。スリープモードで省エネ運転に切替えができたり、便利なエアブロー機能付きでエアー消費量を従来より約15~25%ダウン。オフタイマー付きで作業の標準化に対応する機能も充実しています。
■導電性ゴムマット GR-100、LG-100、SG-100

半導体や電子部品など静電気対策を必要とする作業面台用の導電性ゴムマット。半田付け作業にも安心の、熱で溶けないNBR製です。ラインナップは部品が識別しやすく目にやさしい3色(グレー、ライトグリーン、グリーン)があり、目的に合わせて選べます。
おすすめの静電気対策工事
床材の交換や帯電防止剤の塗布などの施工によって静電気を抑えることができます。部分施工や既設張替え、新設など、工場のメンテナンス日に合わせてご計画いただくことをお勧めします。
①導電性ビニル床シート・タイル
導電性に優れた導電性グレードのシート・タイルです。一般的な帯電防止床材を超える高度な静電気対策ができます。半導体工場やクリーンルームなど、特に静電気障害を嫌う場所に適しています。
②帯電防止ビニル床シート
静電気の発生を防ぐ、帯電防止性グレードのシートです。ホコリの付着やコンピュータの誤作動を防止します。コンピュータルームやエレクトロニクス工場など、帯電防止性が求められる施設に適しています。
③導電性塗床
優れた導電性・帯電防止効果が得られるエポキシ系導電床です。耐薬品性・洗浄性・水密性・気密性を合わせ持つシームレスな床で、清掃が容易です。既設の塗床材を撤去することなく、導電床に改修することができます。
床材 選定のポイント
静電気対策の床工事においては、用途や利用シーンに合わせた床材を選ぶ必要があります。
◆導電性と帯電防止性の違い
床材には、導電性グレード・帯電防止性グレードといった、各種グレードが使われます。どちらも静電気を蓄積しない特性を持っていますが、床工事を行う際は、用途に合わせて選定する必要があります。
電気を通す性質のことを「導電性」といいます。導電性グレードは、導電性の樹脂を使い、電気をゆっくりグランドに逃がす特性を持っています。静電気障害を嫌う場所に最適です。
(用途例:半導体、電子機器、組み立て工場、製薬工場などのクリーンルーム・病院、無菌室など)
また、物質が電荷を帯びていることを「帯電」といい、帯電している状態では静電気が蓄積していきます。帯電防止グレードは、帯電を防止し静電気の蓄積を防ぐ特性を持っています。
静電気が発生しにくい床材を選びたい場合は、導電性グレードがおすすめです。
(用途例:電子機器組み立て工場、コンピュータールーム、銀行の電算センター、オフィスなど)
<シート>
温湿度の変動が少なく継ぎ目も溶接処理されるため、傷みが少ないのがメリットです。重量物(リフトや台車)が通らない環境に最適です。
<タイル>
部分的に張り替えしやすいため、施工時の設備移設などの手間が少なく済みます。傷んだ箇所の部分補修がしやすく、設備や工程の配置換えが多い場合に最適です。
<塗床>
重量物(リフトや台車)の通過にも耐えることができます。新設工事や敷き直しでは、施工時の乾燥に時間がかかりますが、部分補修は比較的楽に行うことができます。
静電気対策の床工事は、施工面積にもよりますが、1〜2日程度で完了します。(事前の打ち合わせや資材準備は別途必要です)
まとめ
製造現場における静電気の発生メカニズムとその対策方法について述べてまいりました。工場における静電気は、生産現場での機械トラブルや製品の品質問題、さらには火災などの重大な事故につながるリスクがあります。そのため、静電気対策は安全で効率的な生産環境を維持する上で欠かせません。上記に挙げた静電気対策を総合的に実施することで、静電気によるトラブルを未然に防ぎ、作業環境の安全性と生産効率を高めることができます。静電気対策は継続的な取り組みが重要ですので、経営層と現場が一体となって取り組むことをお勧めいたします。
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