電池の話
投稿日:2025.04.22
太陽電池に続き、電気を蓄える電池の話をします。
太陽電池は電気を起こしますが、電池は電気を蓄えます。
2010~2012年 シャープで家庭用の蓄電池システムの開発
2017~2021年 日本たばこ産業で、加熱式たばこ喫煙具の電池開発
に携わっていました。
電池は関西の地場産業で、関西地方を業界ではシリコンバレーに似せて「バッテリーバレー」と呼んでいます。
太陽電池も殆どが、関西企業(シャープ、三洋、パナソニック、京セラ)から始まりましたが、
電池も、関西企業が多いです。GSユアサ、パナソニック、マクセル、村田製作所、エナジーウィズ・・・
GSユアサは、日本電池(GS=島津源蔵)と湯浅電池(ユアサ商事の子会社)の合併でできました。
一番ホットなリチウムイオン電池も、関西企業以外では、仙台でソニーが作っていましたが村田が買収しました。
世界最大のリチウムイオン電池メーカーのCATLは、現在は中国企業ですが、元はATL(TDK子会社)です。
ATLはTDKをスピンアウトした技術者が、中国の深センで起業した会社で、TDKが資金援助を行っていましたが、その後子会社化しました。
深センは香港に近い経済特区であり、世界的な電気製品工場の集積地です。深センの隣の広州は自動車産業の集積地です。
深センで起業したATLは、電池の性能が良かったので販売が順調で、工場を拡張しようと土地を探していた時に、
当時、福建省福州市長であった習近平氏の誘いを受けて、工業団地に新工場を建設し、現在に至っています。
習近平氏のATLへの思入れは相当に強く、TDKに対して自動車向けのみ分離独立するよう要望し、CATLが誕生しました。
福州のATLの工場を見学しましたが、広大な敷地を真っ二つにするように、フェンスが張ってありました。
リチウムイオン電池は、自動車用で需要が増えましたが、殆どが中国製です。日本ではパナソニックが頑張っています。
理由は、特許が切れていることと、製造装置さえ買えば作れる。工場廃液処理は、中国は日本より甘いからだそうです。
リチウムイオン電池は、電解液に水が使えず、石油系の電解液を使うので、常に発火の危険性があります。※
この欠点を克服すべく、固体電解質の電池も開発途上です。(容量の大きな電池は未だ)
リチウムイオン電池は、シート状の電極(正極と負極)、電解液とセパレータで構成されます。
電極は、フィルムに電極材料(正極はリチウム化合物、負極はカーボン)を塗布したものです。
セパレーターはメッシュ状のシートで、電極同士が直接触れないようにしています。(ショート防止)
電極面積によって取り出せる電流が決まりますので、多数積み重ねて電池にします。
積み重ね方法には、海苔巻きのような巻き型、シート状の物を積み重ねるスタック型があります。
前者は円筒型、後者は四角い形状(携帯の電池のような)をしています。
電極を作る技術は、カセットテープの製造工程と類似しています。パナソニックやソニー、TDKが得意としていた分野です。
カセットテープでは、鉄粉をポリエステルシートに塗布していました。
ちなみに、ATL(CATL)はスタック型のみ生産しています。
※ソニーさんの話
初期の頃、仙台のリチウムイオン電池工場でボヤが起き、皆、消火活動もせず見ていた。消防も手出しができない。
リチウムを使っているので、水を掛けたら大爆発すると、工場の人も消防も思い込んでいました。
技術者が駆けつけて、ホースで水を掛けて消火したそうです。皆唖然!
技術者曰く、使っているリチウムの量が微量で、化学反応して発火するレベルではない。とのことです。
つづく
営業本部 エンジニアリンググループ
山本 一詞