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歩く速度と仕事の効率

投稿日:2025.12.02

シャープの生産技術本部時代に、企業研究会という業界団体の会合に、毎月1回1年間参加させられたことがあります。
「させられた」とは消極的な言い方ですが、シャープが好調の時代には、頼まれて色々な団体に会社として参加をしたものの、殆どが東京での会合で、出不精で喋りが下手なシャープ幹部は自ら出席はせず、良く私にその役割が廻ってきました。だいたい各部署とも東京に出かけるメンバーは決まっており、窓口役の東京広報部に集まるのは顔見知りが多かったです。
企業研究会の生産技術部会という会合は、参加しているのが大手製造業の部長や事業部長クラスです。毎月2社、自社での生産技術紹介を30分で話をする。というテーマがあって、私は亀山工場の紹介をさせて頂きました。
その中で、当時キャノン電子の社長をされていた酒巻さんから、面白いお話があったのを今でも覚えています。
酒巻さんは、大学の工学部を卒業後キャノンに入社し、キャノン電子で生産技術に30年間携わり、キャノン電子の幹部になった人です。キャノン電子は、キャノンの複合機(コピーやプリンター)を生産している工場で、1000名の従業員が働いていたそうです。
酒巻さんの発表テーマは、「歩行スピードと作業効率」(詳細は覚えていない)でした。実は酒巻さんは、このテーマで論文も書かれています。普段の歩行スピードが速い人は、仕事も速いという相関関係があるそうです。
キャノン電子の従業員採用面接は、控え室と面接室の間に20m程の長い廊下があり、廊下に光電センサーが取り付けられ、20mを歩行する時間が面接官の机の下に表示されるそうで、そのデータが採用の参考にされるといいます。
工場のライン生産ではベルトコンベア上に流れてくる部品を順次組み立てて行くので、作業が遅い人が居ると、ライン全体のスピードがその人によって制約されてしまいます。(これを律速という)またセル生産では、全行程を一人で組み立てるので、作業が遅い人は1日に完成できる製品も少なくなります。同じような賃金を支払っている会社からすると、できるだけ作業の速い人を雇いたいのが本音です。
酒巻さんの考えは徹底しており、構内には「5mを3.6秒で歩け」と書かれているそうです。
歩く速度は人それぞれですが、酒巻さんの説を基に、色々な人を見ていますと、仕事であれ、プライベートであれ、結構当たっているように思います。


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山本一詞

営業本部 エンジニアリンググループ

 

山本 一詞

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