電気自動車は普及するか
投稿日:2025.12.16
世界の自動車メーカーが電気自動車(EV)の開発に凌ぎを削っていましたが、今年になってドイツの自動車メーカーが、EUに対してエンジン車を存続させるように働き掛けています。(2035年からエンジン車禁止予定)トヨタもモーターショウ等にはフルラインナップのEVを展示していますが、実際に量産されているモデルはbZ4X一車種しかありません。それどころか、次世代の最上級車向けに新たにV8エンジンを開発するようです。
中国では相変わらずEVが増えていますが、先進国と違ってガソリンスタンドが極めて少ないという事情があり、それを充電ステーションで補う国策によって普及しています。携帯電話も同じで、そもそも有線電話の電話局が殆ど無かったので、無線を選択したという事情があります。
EVは充電ステーションがあれば、急速充電によって30分程度で半分程度の充電が可能です。しかし、家庭で充電すると8~16時間も掛かります。その理由は、家庭で使える電力容量に制限があるからです。急速充電器の消費電力は50kWあり、基本料金の問題、キュービクル設置、充電器設置と家庭への導入にハードルがかなり高いです。(キュービクルと急速充電器だけで初期投資が800万円以上)頻繁に使用する商用でないと急速充電器の設置は難しいです。
長距離を走らない買い物用途ならEVでも十分で、日産サクラ(EV軽四)は3年間で10万台を販売するヒット作になっています。(日本のEVの4割)おもしろい事に、日産は1947年に電気自動車「たま」を発売しており、当時65kmの走行が可能だったようで、75年ぶりの復活です。「たま」は実物を見たことがありますが、今でも売れそうなレトロな車です。
充電なしで主に電気で走らせる自動車には、トヨタのPHEVや日産のePowerがあります。エンジンで発電する点は同じですが、PHEVはハイブリッド車の電池容量を増やしたもの、ePowerは完全なモーター駆動という違いがあります。PHEVでも電池残量がある間はモーターで走りますので、ガソリン車と同じように燃費を云々するのは、いささかナンセンスですね。
実はエンジンは車を走らせるには不向きな動力源です。低回転でのトルクが低く、スタートダッシュをするには、エンジンを大きくするか、回転数を上げる必要があります。走り出せばトルクは少なくて済みます。(静止摩擦≫動摩擦)マニュアル車の免許を持っている人は経験していますね。
モーターは全く逆の特性です。スタート時のトルクが最大、回転が上がるとトルクが減ってきます。車輪を動かすには理に適っています。電車と自動車では圧倒的に電車の方がエネルギー効率が良い理由です。
ハイブリッド(HV)はエンジンとモーターの良い所取りですが、コストが高くなります。エンジンルームにびっしり機械が詰まっています。逆にEVはエンジンルームがスカスカです。スカスカなのに高い理由は電池です。電池の価格が全体の7割を占めているのではないでしょうか。(電池容量はトヨタHVが1.5kWh、日産リーフが75kWh、トヨタPHEVが15kWh)従い、本格的にEVシフトを考えると、自動車メーカーは自社で電池を作る選択を迫られます。トヨタが二の足を踏む理由です。
先日、三菱のアウトランダーPHEVを試乗しました。この車、先代まで自動車評論家に見向きもされなかった車ですが、現行型は大絶賛されています。PHEVで電池が23kWhも搭載されており、100km近くEV走行ができます。それだけではなく、モーターが前後に2基搭載された4WDで最高出力が300馬力あります。リアモーターは電子制御でカーブの状況によって左右の回転が自動制御されることで、ハンドルを切ると車が積極的に曲がってくれるという新感覚で抜群の安定感です。走りが良いのは言うまでもなく、「これはランサーターボの再来ですね!」と言うと、営業マンが「皆さん、そう言われ、無茶な運転されて困っています。」と。
家庭で充電すると、殆どの人はエンジン(2.4L)が掛からないので、1ヶ月に1度、5分程度強制的にエンジンが始動するようです。久々に面白い車に乗りました。しかし、お値段が・・・。
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営業本部 エンジニアリンググループ
山本 一詞
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