国際ロボット展2025で感じたこと
投稿日:2025.12.19
丸2日間、じっくりと見学できました。
すごく感じることは、ロボット本体メーカーばかりが目立って、ハンドメーカーやソフトベンダー(SIer)の存在が希薄だったことです。
ご周知の通り、ロボット本体だけ買っても何もできません。作業をさせるには手先であるハンドが必須ですし、ロボットやハンドを使って実動作をさせるソフトウェアが必要です。これを一括で引き受けてくれるようなSIerも必要です。(HCI社もSIer)
どこのデモを見ても、ロボットの作業内容がカスタムで、汎用で直ぐに導入して使えるようなロボットが無いことです。大企業でロボット導入が進んでも、中小企業に導入が進まないのは、ロボットが分かる人材やロボットが使える人材が居ないからです。
勿論、人では難しい作業(危険な作業、重量物を扱う作業、精密な繰り返し作業、3Kの作業など)ではロボット導入が進んでいます。しかし、今、中小企業に必要なのは人手不足対策です。要は単純な仕事だけど、募集を掛けても人が集まらない作業です。人が集まらず廃業を選択する中小企業が増えています。
当社のバランサードゥボットは、単純な荷役作業をこなすロボットですが、通い箱というどこの工場にでもある物を運ぶというデモで、かなりの見学者が見入っていました。ただ、1500万円~とう価格はなかなか受け入れ難いようです。
なぜ、1500万円も掛かるのか?工作機械等と比較してもかなり割高です。それは量産化していないからです。少数のロボットシステムを高い単価で販売しているのが今のロボット業界だと思います。2024年の世界の産業用ロボット出荷台数は54万台です。参考までに自動車は9200万台、冷蔵庫は12,000万台と桁が違い過ぎます。ロボットは@何千万~何億もするから商売が成り立っているのです。
それでも倍々ゲームで成長しているならともかく、業界の年成長率も10%と高くはないです。(中国は全体の半数で成長率20%、米国は成長率-5%)恐らくは重電機メーカーの思想(一品一様)から抜けきれないだろうと思います。
ちなみにサービスロボットは2024年出荷台数が2,000万台を突破し産業として定着しています。ファミレスで働く配膳ロボットはもはや当たり前ですよね。(HCIさんもこちらに注力)
ロボット業界に必要な事は、買って直ぐに使える汎用製品を大量に製造してコストを低減することです。ヒューマノイドの人型がそれだと言う人が居ますが、NEDOによればそれは40年先だと言います。
協働ロボット(本体)が汎用品として一番近い位置にあると思います。どこのメーカーでもほぼ同じ構造と外観をしています。部品の共通化をし易く、量産効果を見込めます。
中国製が多いですが、恐らく中の部品は各社とも同じようなメーカーから購入しているのではないかと思います。日本ではNidecがロボットの主要部品を作っていますが、彼らが完成品を作るのは極めて容易だと思います。恐らく時期を見ているのでしょう。(Nidecは量産メーカーです)ただし、本体のみ汎用では普及しません。
ロボットコントローラーもそんなに特殊な部品は使われていないと思います。サーバーとかワークステーションと性能的に同等で、防塵防水性能の高い専用筐体に収められますが、格段に部品が高価な訳ではないと思います。要は数が出ないのです。信頼性を横に置けば、任天堂Switchでも制御可能ではないかと感じています。「信頼性」という実態不明なものが価格をつり上げていると感じます。(太陽光発電と同じ)
汎用化の決め手は、工場での単純作業を10パターンくらいに分類して、ロボットの種類を集約することです。集約してソフトウェアやハンドを共通化すればコストは劇的に下がります。今のように都度、注文生産で作っていてはコストは下がりません。
工場の作業は、 ① つかむ(ピッキング)、② 置く(パレタイズ・デパレタイズ)、③ 運ぶ(搬送)、④ 並べる・整列、⑤ 検査する(目視代替)、⑥ 加工機に投入する(マシンテンディング)、⑦ 取り出す、 ⑧ ネジ締め・簡易組立、⑨ 研磨・バリ取り、⑩ 梱包・箱詰め に分類されます。一人で持ち上げる重量は15kgまでと決められていますので、スペック的には協働ロボットで一人の作業を置換できます。
ロボットにはビジョンカメラが必須と考えます。カメラも数十万台といいう単位で量産すればコストは下がります。昔、工業用の監視カメラは数百万円しましたが、今Webカメラは1万円程です。これが量産効果です。カメラとAIがあれば画像を見ながら操作できますのでティーチングが格段に楽になります。
10種類くらいに集約化して各社共通仕様にすれば、本体価格は100万円以下も可能だと思います。特にソフトウェアの量産効果は、1個カスタムで作っても、1万個コピーしても開発費は同じで、劇的に単価が下がります。任天堂Switchも100個しか販売しないなら、おそらく1台10億円くらいするでしょう。要するに家電メーカーの感覚が必要です。
本体100万円、ソフト100万円、ハンド100万円で合計300万円くらいになれば、2桁増くらいの数が売れるのではないでしょうか。(逆に2桁増ならこの価格が実現できる。卵と鶏の関係)
この実現には、政府のトリガーが必要です。(1)ロボットの標準仕様化、(2)Sier育成のための助成金や優遇税制、(3)標準ロボットを購入する際の補助金 の3点セットが必要ではないでしょうか。
ご参考
石川県の有川製作所、山崎電機(小さな商社)とOMRONのコラボ
ロボットを導入したら社員が増えた? 北陸中小企業が示す自動化と採用の好循環:協働ロボット(1/3 ページ) – MONOist
自動化目指す企業の参考に…工場の自動装置を一般公開 有川製作所が石川・津幡町に展示場オープン
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営業本部 エンジニアリンググループ
山本 一詞
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