ペロブスカイト太陽電池
投稿日:2025.07.16
経産省やマスコミで革新的な太陽電池として持て囃され、メーカーの積水化学の株価もかなり上昇しています。
経産省は、消費電力の多い工場の屋根にもペロブスカイト太陽電池を採用するように、新たな施策を検討しています。
ペロブスカイト太陽電池のメリットは、
①曲げられる=色々な用途に使用できる。
②材料が純国産で、中国などの影響を受けにくい。(純国産技術)
③塗布工程だけで製造できるので安く製造できる。
これはメーカーの宣伝文句そのままです。
しかし、曲げられる太陽電池は過去に何度も作られています。
シリコン薄膜(アモルファス)や有機太陽電池です。
これらが普及できなかった原因は、実際の建物への施工が難しかったことに他なりません。
一見シート状のペラペラの太陽電池ですが、裏面に電気コネクター等がありフラットではありませんでした。
で結局は、専用の金属の取付部材が必要になり、メーカーの宣伝文句よりずっと設置コストが掛かっていました。
既存のシリコン結晶の太陽電池は、曲げられないイメージがありますが、そうではありません。
ガラスではなくプラスチックシートをベースとした太陽電池は特殊用途で受注生産されており、直径2メートル程度の曲面でも大丈夫です。
ソーラーカーレース用に、シャープも毎年受注生産していますし、自動車メーカーにもサンプルを出しています。
メーカーが主張するような極端な曲げ状態で実際に使用されることはありません。
何故なら太陽光を受けられないからです。
現在の太陽電池の標準形は、50年も掛けて色々な検討を続けた結果です。
コストや耐久性、施工性を加味した結果です。
シートをテントのように張れば良いのではないかという素人アイデアはありますが、テントを張るのは結構難しい。
太陽電池は自然環境に長期間晒されるので、フィルムのような有機材料ではなく、無機材料が適するというのが長年の経験値です。
ちなみに自動車向けのフレキシブル太陽電池は10年程度の寿命です。
それは自動車の実使用に即しています。
現在の太陽光パネルの構成材料は、シリコン太陽電池、アルミ配線、ガラス、アルミ枠、PETシート(裏面)、EVA樹脂、ブチルコムです。
表面がガラスですので、EVA樹脂やPETシート、ブチルゴムは紫外線の影響を受け難くなっています。ここは一つの大きなポイントです。
太陽電池は、ガラスとPETシートに挟まれており、EVA樹脂で隙間なく封止されています。
ブチルはアルミ枠とガラスの隙間を埋めています。
ブチルは屋根材にも使われる合成ゴムで耐久性や対候性は抜群です。
日本が太陽電池で中国に負けてるのは、シリコンだけでなく部材コストです。
シリコン、アルミやガラスは、中国メーカーの方が圧倒的に低コストです。
理由は電力コストとトータル生産量です。
太陽光パネルの製造には、殆ど人手による作業はなく、殆どが自働化設備です。
なので人件費は無関係。
シート状の太陽電池をどうやって現実的に使い物になる形に仕上げるのか、興味がありますね。
今と同じように、ガラスとアルミ枠を使うなら、ゲームチェンジは無理です。
シャープは従来のシリコン太陽電池に重ねてペロブスカイト太陽電池を使う方針のようです。
シリコン型は、短波長(青色側)では余り発電せず、長波長(赤色や赤外)に良く発電します。
ペロブスカイト型は、可視光(青色~赤色)で良く発電します。
両方を重ねることで、幅広い波長で発電でき、理想的な太陽電池になります。
流石にシャープですね。
重ね合わせは、30年前にも三洋電機が実用化しており、HITと呼ばれていました。
HITでは、ペロブスカイトの代わりに、アモルファスシリコンを使用していました。
特許があって真似が出来なかったのですが、10年程前に特許が切れています。
アモルファスシリコンは、部屋の中でも発電するので、電卓や時計などに使用されています。
ペブストロガイトもこのような用途には向いていると思います。
ですが需要量はわずかです。
勿論、アモルファスもシート状で良く曲がります。
中国もペロブスカイト太陽電池を開発していますが、
シャープと同じく重ねあわせか、単独でガラス基板に生成しています。
いずれにせよ、今の太陽電池の空き替えを狙って、施工に特別な工夫を要しない形式です。
この戦いは、中国に分がるように思えてなりませんね。
おわり
営業本部 エンジニアリンググループ
山本 一詞