2025.07.08

エイジフレンドリーな職場とは?

 「エイジフレンドリー」という言葉を耳にされたことはありますでしょうか。「エイジフレンドリー」とは、【高齢者の特性を考慮した】を意味する言葉で、WHOや欧米の労働安全衛生機関で使用されています。昨今の少子高齢化に伴い、高年齢労働者は増加の一途をたどり、60歳以上の雇用者数は過去10年間で1.5倍に増加しています。こうした中、高年齢労働者の労働災害が増加傾向にあり、労災防止対策が喫緊の課題となっています。高年齢労働者の特性に配慮した職場=エイジフレンドリー職場を目指すことは、高齢者だけでなく全ての労働者が安全で健康に働ける快適な環境を整えることにも繋がります。ハード・ソフト両面からの対策と、それを後押しする施策・支援が今求められています。本コラムでは、エイジフレンドリーを推進する背景や取り組みについて解説いたします。

高年齢労働者の労災の現況

 労働災害による死傷者数において、60歳以上の労働者が占める割合は26%(2018年)で増加傾向にあります。高齢者は身体機能が低下すること等により、若年層に比べ労働災害の発生率が高く、中でも、転倒災害、墜落・転落災害の発生率が若年層に比べ高いというデータがあります。また、労働災害時の休業が長期化しやすいことも分かっており、職場の人手不足を招く恐れもあります。労働災害防止を図るためには、高齢者の健康や体力状況を考慮した職場環境改善などの取り組みが重要となります。

エイジフレンドリーガイドラインとは

 こうした状況を改善するための取り組みとして、厚生労働省では、令和2年3月に「エイジフレンドリーガイドライン(高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン)」を策定しました。事業者は、高年齢労働者の就労状況や業務の内容等の実情に応じ、国や関係団体等による支援も活用して、実施可能な労働災害防止対策に積極的に取り組むように努めることが求められています。以下より、事業者に求められる5つの項目と、労働者に求められることについて解説します。

事業者に求められること

1. 安全衛生管理体制の確立

 ■経営トップによる方針表明と体制整備
 ・企業の経営トップが高齢者労働災害防止対策に取り組む方針を表明します
 ・対策の担当者や組織を指定して体制を明確化します
 ・対策について労働者の意見を聴く機会や、労使で話し合う機会を設けます
 ※高年齢労働者が、職場で気付いた労働安全衛生に関するリスクや負担、自身の不調を相談できる
  環境を作ることが重要です

 ■危険源の特定等のリスクアセスメントの実施
 ・高年齢労働者の身体機能の低下等による労働災害発生リスクについて、災害事例やヒヤリハット
  事例から洗い出し、対策の優先順位を検討します
 ・リスクアセスメントの結果を踏まえ、2以降の具体的事項を参考に取組事項を決定します
 ※職場改善ツール「エイジアクション100」のチェックリストの活用も有効です
 ※フレイルやロコモティブシンドロームなどの高齢者特有のリスクも考慮した対策が重要です
  ※フレイル:加齢とともに、筋力や認知機能等の心身の活力が低下し、
   生活機能障害や要介護状態等の危険性が高くなった状態
  ※ロコモティブシンドローム:年齢とともに骨や関節、筋肉等運動器の衰えが
   原因で「立つ」、「歩く」といった機能(移動機能)が低下している状態

2. 職場環境の改善

(1) 身体機能の低下を補う設備・装置の導入(主としてハード面の対策)
 ・高齢者でも安全に働き続けることができるよう、施設、設備、装置等の改善を検討し、
  必要な対策を講じます
 ・以下の例を参考に、事業場の実情に応じた優先順位をつけて改善に取り組みます

(2) 高年齢労働者の特性を考慮した作業管理(主としてソフト面の対策)
 ・敏捷性や持久性、筋力の低下等の高年齢労働者の特性を考慮して、作業内容等の見直し
  を検討し、実施します
 ・以下の例を参考に、事業場の実情に応じた優先順位をつけて改善に取り組みます

 ・事業場の状況に応じて、勤務形態や勤務時間を工夫することで高年齢労働者が就労しやすくします
  (短時間勤務、隔日勤務、交替制勤務等)
 ・ゆとりのある作業スピード、無理のない作業姿勢等に配慮した作業マニュアルを策定します
 ・注意力や集中力を必要とする作業について作業時間を考慮します
 ・身体的な負担の大きな作業では、定期的な休憩の導入や作業休止時間の運用を図ります
 <暑熱な環境への対応>
 ・一般に年齢とともに暑い環境に対処しにくくなるので、意識的な水分補給を推奨します
 ・始業時の体調確認を行い、体調不良時に速やかに申し出るよう日常的に指導します
 <情報機器作業への対応>
 ・データ入力作業等相当程度拘束性がある作業では、個々の労働者の特性に配慮した無理の
  ない業務量とします

3. 高年齢労働者の健康や体力の状況の把握

(1) 健康状況の把握
 ・労働安全衛生法で定める雇入時および定期の健康診断を確実に実施します
 ・その他、以下に掲げる例を参考に、高年齢労働者が自らの健康状況を把握できるような
  取組を実施するよう努めます

(2) 体力の状況の把握
 ・高年齢労働者の労働災害を防止する観点から、事業者、高年齢労働者双方が体力の状
  況を客観的に把握し、事業者はその体力にあった作業に従事させるとともに、高年齢
  労働者が自らの身体機能の維持向上に取り組めるよう、主に高年齢労働者を対象とした
  体力チェックを継続的に行うよう努めます
 ・体力チェックの対象となる労働者から理解が得られるよう、わかりやすく丁寧に体力
  チェックの目的を説明するとともに、事業場における方針を示し、運用の途中で適宜
  その方針を見直します

<対策の例>
 ・加齢による心身の衰えのチェック項目(フレイルチェック)等を導入します
 ・厚生労働省作成の「転倒等リスク評価セルフチェック票」等を活用します
 ・事業場の働き方や作業ルールにあわせた体力チェックを実施します。この場合、安全作業
  に必要な体力について定量的に測定する手法と評価基準は、安全衛生委員会等の審議を踏
  まえてルール化するようにします

4. 高年齢労働者の健康や体力の状況に応じた対応

(1) 個々の高年齢労働者の健康や体力の状況を踏まえた措置
 脳・心臓疾患が起こる確率は加齢にしたがって徐々に増加するとされており、
 高年齢労働者については基礎疾患の罹患状況を踏まえ、労働時間の短縮や深夜業
 の回数の減少、作業の転換等の措置を講じます

(2) 高年齢労働者の状況に応じた業務の提供
 健康や体力の状況は高齢になるほど個人差が拡大するとされており、個々の労働者の状況
 に応じ、安全と健康の点で適合する業務をマッチングさせるよう努めます

(3) 心身両面にわたる健康保持増進措置
 ・「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」や「労働者の心の健康の保持増
  進のための指針」に基づく取組に努めます
 ・集団と個々の高年齢労働者を対象として身体機能の維持向上に取組むよう努めます
 ・以下の例を参考に、事業場の実情に応じた優先順位をつけて取り組みます

<対策の例>
・フレイルやロコモティブシンドロームの予防を意識した健康づくり活動を実施します
・体力等の低下した高年齢労働者に、身体機能の維持向上の支援を行うよう努めます
 例えば、運動する時間や場所への配慮、トレーニング機器の配置等の支援を考えます
・健康経営の観点や、コラボヘルスの観点から健康づくりに取り組みます

5. 安全衛生教育

(1) 高年齢労働者に対する教育
 ・高齢者対象の教育では、作業内容とリスクについて理解させるため、時間をかけ、写真や図、
  映像等の文字以外の情報も活用します
 ・再雇用や再就職等により経験のない業種、業務に従事する場合、特に丁寧な教育訓練を行います

(2) 管理監督者等に対する教育
 教育を行う者や管理監督者、共に働く労働者に対しても、高年齢労働者に特有の特徴と
 対策についての教育を行うよう努めます

労働者に求められること

生涯にわたり健康で長く活躍できるようにするために、一人ひとりの労働者は、事業者が実施する取り
組みに協力するとともに、自己の健康を守るための努力の重要性を理解し、自らの健康づくりに積極的
に取り組むことが必要です。
個々の労働者が、自らの身体機能の変化が労働災害リスクにつながり得ることを理解し、労使の協力の
下、以下の取り組みを実情に応じて進めてください。

・自らの身体機能や健康状況を客観的に把握し、健康や体力の維持管理に努めます
・法定の定期健康診断を必ず受けるとともに、法定の健康診断の対象とならない場合には、
 地域保健や保険者が行う特定健康診査等を受けるようにします
・体力チェック等に参加し、自身の体力の水準を確認します
・日ごろからストレッチや軽いスクワット運動等を取り入れ、基礎的体力の維持に取り組みます
・適正体重の維持、栄養バランスの良い食事等、食習慣や食行動の改善に取り組みます

エイジフレンドリーの取組への支援

 エイジフレンドリーな職場環境づくりを支援する施策のひとつに、「エイジフレンドリー補助金」があります。中小企業を対象に、高年齢労働者の労働災害防止対策や健康保持に向けた取り組みに要する経費の一部が助成される補助金制度です。現在は令和7年度エイジフレンドリー補助金の申請を受付中で、受付期間は10月31日までとなっています。(予算額に達した場合、早く受付を終了する可能性があります。)導入の具体例としては、転倒・墜落災害防止のために社内の階段に手すりを設置したり、重量物搬送に電動リフトを導入したり、熱中症防止対策のための機器導入も対象になります。

▼令和7年度 エイジフレンドリー補助金 補助対象コース


 また、高年齢労働者の安全衛生対策について個別に相談したい時は、「中小規模事業場 安全衛生サポート事業」が活用できます。労働災害防止団体が中小規模事業場(労働者数100人未満)に対して、安全衛生に関する知識・経験豊富な専門職員を派遣して、高年齢労働者対策を含めた安全衛生活動支援を無料で行います。
 こういった様々な支援策を上手く活用しながら、高齢者労働者はもちろん、すべての労働者が安全に働ける職場環境の実現を社会全体として目指していきたいものです。

関西エリア(大阪・兵庫・京都・滋賀・奈良・和歌山)を中心に、
東海エリア(三重・岐阜・愛知)、中四国エリア(岡山)の工場工事なら
西川グループにお任せください!

CONTACTお問い合わせ

メールでのお問い合わせ

メールでのお問い合わせはこちら