2025.11.28

化学物質のリスクアセスメントについて

 平成28年6月1日、労働安全衛生法が改正され、SDS交付義務の対象となる物質(について事業場におけるリスクアセスメントが義務付けれらました。そして令和7年4月1日の労働安全衛生法の法改正では、表示・通知対象物質の追加、保護対象範囲の拡大、請負人への周知義務が新たに改正されました。これらは業種、事業場規模にかかわらず、対象となる化学物質の製造・取扱いを行うすべての事業場が対象となっています。製造業、建設業だけでなく、清掃業、卸売・小売業、飲食店、医療・福祉業など、さまざまな業種で化学物質を含む製品が使われており、労働災害のリスクがあります。
 労働災害低減のため、義務付けられている対象物質のみならず、対象物質に当たらない場合でも、リスクアセスメントを行うよう努める必要があります。本コラムでは、労働者の安全を確保することを目的として、建設業における化学物質管理の重要性と具体的な運用方法をお伝えしてまいります。

化学物質の定義と対象

 化学物質とは元素・化合物を指し、塗料、接着剤、剥離剤、セメント、モルタル等に含まれる多種成分が該当します。 建設現場で扱う代表的な作業6項目(セメント系粉体取り扱い、スラリー状コンクリート使用、ドア塗装などの有機溶剤取扱い、防水・シーリング・接着作業等)が挙げられています。

つまり、塗装や防水工事などには必ず化学物質の管理を行う必要があります。

化学物質の危険性の見分け方

 化学品の危険性や有害性を判断するには、製品に貼られているGHSラベルを確認することが重要です。GHSラベルとは、化学品の「危険性・有害性」を分かりやすく示すための統一された表示(絵表示・信号語・注意書きなど)です。GHSラベルを確認することで、その化学品が引火性、腐食性、急性毒性、呼吸器感作性、環境有害性などどのような危険有害性を持つかが把握でき、安全対策を考えることができます。

化学物質の管理方法とは?

 化学物質の管理方法としては、①リスクアセスメントと②リスク低減対策の二つが主に挙げられます。

リスクアセスメントの手順

①ラベル・SDSで危険有害性を特定(GHS絵表示・分類に基づく)
②作業内容からリスク(ばく露の可能性と程度)を見積もる
③ばく露濃度低減措置(換気、局所排気、工程変更、保護具など)を検討・実施
チェックリスト:管理者・責任者の選任、ラベル/SDS確認、作業内容の確認、マニュアルへの記載等を点検することが推奨されます。

リスク低減対策

 優先される対策例としては、下記の二つが挙げられます。
①十分な換気(自然換気・機械換気・局所排気)
②個人用保護具の適正使用、作業方法の見直し、ばく露抑制設備の導入。
保護具管理については、どの作業でどの保護具を使うかを保護具着用管理責任者が明確にし、実際の使用記録を職長等が残すことが重要です。 教育・記録:労働者向けの教育実施と、使用した製品や保護具、作業ごとの記録保存が求められます。

SDSシートの提出義務

 SDS(Safety Data Sheet、安全データシート)は、有害化学物質を含む製品の安全な取り扱い、保管、廃棄に関する情報を提供する文書です。化学物質のリスク情報や応急処置方法、保護具の種類などが記載されています。SDSの提出は、下記の法律に基づき義務づけられています。

法律名内容SDS提出義務の概要
労働安全衛生法労働者の安全と健康を守るための規定労働者に有害・危険物質を取り扱う際にはSDSの提供が義務付けられている。
化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)化学物質の環境への排出量の把握・管理化学物質を使用する事業者にSDSの提供が求められる場合がある。
消防法危険物の保安管理一部の危険物に関しSDSの提供を通じて安全管理が求められる。
建設業法建設工事に関連した安全管理措置有害化学物質を使用する建設現場での適切な情報共有のためSDSの利用が促進される。

 SDS提出のタイミングや方法は、以下の通りです。
・製品を初めて販売・引き渡す際には、必ず最新のSDSを添付して提供する義務があります。
・化学物質に変更があった場合や新たな法規制が適用された場合、速やかに更新SDSを提出する必要があります。
・メールや専用サイトでの提供も認められているが、依頼があれば書面での提出も対応します。

 SDSの提出を正しく行うことにより、現場の安全管理の徹底ができ、リスクアセスメントの重要な資料となります。SDSは法令に基づき化学物質の製造者・販売者から使用者に提供され、使用者はそれを基に安全対策を講じます。

建災防による作業別リスク管理マニュアル

 建災防は労働者のばく露濃度(GHS対象物質)の測定・分析、評価、低減措置の検討を行い、典型作業向けのリスク管理マニュアルを作成しています。 マニュアル使用によりリスクアセスメントと対策の一連作業が完了し、GHSラベル・SDSの情報を現場対応に反映できます。各マニュアルは下記ページよりダウンロードが可能なため、誰でも使用できます。

【建災防】建設業における化学物質取扱い作業リスク管理マニュアル
https://www.kensaibou.or.jp/safe_tech/chemical_management/about.html?id=Anker02

管理体制の整備

 管理体制として、化学物質管理者の選任と保護具着用管理責任者の選任が必要となります。

化学物質管理者の選任

<資格>
・化学物質管理業務を適切に行える能力を有する者
・化学物質管理者講習相当の受講者が望ましい
<職務>
・ラベル・SDSを確認しリスクアセスメントを実施
・リスクアセスメント結果に基づくばく露防止措置の選定・管理
・化学物質の自律的管理に係る各種記録作成・保存、労働者教育の実施など。

保護具着用管理責任者の選任

<資格>
・安全衛生推進者に係る講習の修了者など
・有機溶剤取扱作業主任者や特定化学物質取扱主任者講習の修了者など
<職務>
防毒マスク、手袋、保護めがね等の保護具の選定と管理

まとめ

 建設現場での化学物質管理は、労働者の健康と安全を守るための重要な基盤です。社内で運用方法を取り決め、日常的なチェックリスト(管理者選任の有無、SDS確認、作業内容・マニュアル整備等)を運用し、取り扱い製品や工程が変わるたびに見直しを行うことが、安全な現場づくりの要となります。

 当社では塗装、防水工事などをはじめ、さまざまな作業で塗料や接着剤、シーリング材などを使用するため、運用ルールを守りながら化学物質管理を適切に行い、安全な作業環境の維持に努めてまいります。

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