天井クレーンの点検について

 天井クレーンは、工場や倉庫などで重量物の運搬に欠かせない重要な機械設備です。その安全な稼働を確保するためには、定期的な点検が欠かせません。点検の種類や法的な義務、具体的な検査内容を正しく理解し、適切に実施することが、労働災害を未然に防ぐための基本となります。本コラムでは、クレーンの種類やその点検に関する基礎知識をわかりやすく解説いたします。

クレーンの基礎知識

クレーンとは、次の2つの条件を満たす機械装置のうち、移動式クレーンおよびデリック以外のものと定められています。
①荷を動力を用いてつり上げること(人力によるものは含まない)
②つり上げた荷を水平に運搬することを目的とする機械装置(人力によるものも含む)

クレーンはその用途や構造に応じて多様な種類がありますが、代表的なものは以下の通りです。

クレーンの種類主な特徴と用途
天井クレーン工場などの建屋内の両側壁に設置されたランウェイ上を走行します。トロリにより荷の巻上げ、横行、走行が可能です。機械工場で広く使われています。
ジブクレーンジブ(腕)を有し、港湾や建築現場で多用されます。形態は低床ジブ、高脚ジブ、クライミング式など多様です。
橋形クレーンクレーンガーダの両端に脚があり、床上のレール上を走行。ふ頭や貨物取扱いに多く使われ、コンテナクレーンもこの一種です。
アンローダばら物荷役用に特化したクレーンで、橋形や引込みクレーン式が主流です。
ケーブルクレーン土木工事で使用される吊り索上をトロリが移動する形式。長いスパンにも対応します。
テルハ天井のI形鋼に吊り下げる簡易クレーンで、小型の荷役に適しています。
スタッカークレーン倉庫棚の荷の上下出し入れ用で、フォークを持ち昇降・走行します。
デリック原動機を別置きし、マストやブームを有する吊り上げ専用機械。水平移動は必須条件ではありません。

天井クレーンについて

 天井クレーンは、建物の天井に設置して荷物を吊り上げて運搬する機械のことです。主に工場・倉庫などの現場で、重く大きな建材や部品などの運搬を行う際に使用されています。
 天井クレーンは大きく2つの種類に分けられます。

●オーバーヘッドクレーン

 オーバーヘッドクレーンとは、建物の柱に走行レールを取り付けて、荷物の吊り上げ・運搬を行うクレーンです。建物の柱で荷重を受けるため、大容量のクレーンや重量物に対応できるのが特徴です。
天井とレールの間に空間を設ける必要はありますが、天井梁下までの空間を有効利用できるため、揚程を高く確保できるメリットがあります。また、オーバーヘッドクレーンは、レールのガーターの数に応じて、2つの構造に分けられます。シングルガーターは1本のガーター上を走行し、ダブルガーターは2本の平行なガーター場を走行します。ダブルガーターは、シングルガーターと比べて大容量のクレーンに設置されており、ロングスパンの荷物にも対応できます。

●ローヘッドクレーン(サスペンション形)

 ローヘッドクレーンとは、建物の天井梁に走行レールを固定して、懸垂して走行するように設置されたクレーンです。サスペンション形クレーンと呼ばれることもあります。柱がない場所でも設置できるため、走行レールの取付位置・スパンを自由に設定しやすいことが特徴です。
ただし、柱で荷重を受けるオーバーヘッドクレーンとは異なり、梁に吊り下げる形で荷重がかかるため、重量物の重さによっては吊り上げできない場合もあります。

点検の法的義務

 労働安全衛生法の『クレーン等安全規則』では、0.5トン以上のクレーンを設置した事業者には、日常・月例・年次点検の実施が義務づけられています。検査項目、検査方法及び判定基準は「定期自主検査指針」(厚生労働省告示)で公表されています。自主検査を実施する場合、事業者は、教育カリキュラム等を定めた「定期自主検査者安全教育要領」(厚生労働省通達)に基づいた教育(定期自主検査者安全教育)を検査者に実施するよう勧奨されています。
 また、月例・年次点検を実施する際は結果を記録して、その点検表は3年間保存することが定められています。これらを怠ると、労働基準監督署から是正勧告を受ける等のリスクがあります。また、この自主点検によって異常が見つかった場合には、直ちに補修する義務があります。

点検の種類と内容

天井クレーンの点検は、主に以下の3種類に分けられます。

●年次定期自主検査

 1年以内に1回実施する点検です。クレーン全体の機構や安全装置の劣化・損傷の有無を入念に確認します。専門的な知識と技術を持つ検査者が実施することが求められます。

月次定期自主検査

 1か月以内に1回行う点検で、日常の使用状態を踏まえ、異常や劣化の兆候を早期に発見します。運転に重要な部分の動作や摩耗のチェックが中心です。

●作業開始前点検

 毎日の作業開始前に、運転者が実施する簡易的な点検です。ブレーキやワイヤーロープ、制御装置など、作業に直接関わる部位の正常作動を確認します。

年次定期自主検査月次定期自主検査
対象吊り荷重500kg以上のクレーン吊り荷重500kg以上のクレーン
検査内容・構造部分、機械部分、電気部分の異常の有無
・ワイヤーロープまたはつりチェーンの異常の有無
・つり具の異常の有無
・基礎の異常の有無
・荷重試験
・安全・警報装置(過巻防止装置、過負荷警報装置など)とブレーキおよびクラッチの異常の有無
・ワイヤーロープおよびチェーンの損傷の有無
・つり具(フック、クラブバケットなど)の損傷の有無
・配線、配電盤、集電装置、開閉器・コントローラの異常の有無
・メインロープ、レールロープ、ガイロープの緊結部分の異常の有無、ウインチの据付け状態
検査周期1年以内1ヶ月以内

地震等災害後の点検について

 震度4以上の地震が起きた場合、クレーン各部分の異常の有無について点検を行うことが義務付けられています。(クレーン等安全規則 第37条より)
過去の地震において不具合が多かった部分について、ボイラ・クレーン安全協会が作成した地震後におけるクレーン点検チェックリストがありますのでぜひご活用ください。下記URLよりダウンロードいただけます。(PDF / Excel有)
https://www.bcsa.or.jp/kensa/youshiki/post-3.html

まとめ

 天井クレーンの点検は、安全な作業環境を維持するために法律で定められた重要な義務です。日常点検から法定点検まで、それぞれの点検には目的と手順があり、適切な実施が求められます。点検を怠ると重大な事故につながる可能性もありますので、点検項目を正確に把握し、確実な点検を行うことが不可欠です。これにより、労働者の安全を守り、クレーンの長期的な安定稼働を支えることが可能となります。

 当社では、クレーン等安全規則に準拠した定期点検を実施させていただき、合わせて点検表の発行も行っております。また、クレーンの点検だけにとどまらず、安全対策として落下防止システムの設置やオーダーメイド、修理、改造、工事まで、幅広く対応いたします。クレーンに関することなら何でもお気軽にご相談ください。

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