2025.05.30
工場のカーボンニュートラル達成の方法

近年、環境問題への関心が高まる中で、企業の持続可能な経営が求められています。その中でも特に重要視されているのが、「カーボンニュートラル」です。カーボンニュートラルとは、温室効果ガスを吸収・除去をすることで実質的な排出量がゼロとなった状態のことを言います。
日本政府は2050年までにカーボンニュートラルを達成する目標を掲げており、多くの企業がこの目標に向けて動いています。そのため、製造業においても、温室効果ガスの排出を削減する取り組みが急務となっています。
「カーボンニュートラル」「脱炭素化」を課題として掲げられているが、具体的にどのようにすればよいか悩んでいるといったお客様のお話も耳にします。本コラムでは、工場のカーボンニュートラルを達成するための方法についていくつかご紹介させていただきます。

目次
カーボンニュートラル達成のための方法
1. 再生可能エネルギーの導入:太陽光発電や風力発電を活用し、化石燃料の使用を削減する。
2. 省エネ設備への切り替え:LED照明や高効率モーターを導入し、エネルギー消費を抑える。
3. CO2排出量の可視化:排出量を測定し、削減計画を立てることで、より効果的な対策を講じる。
4. カーボンオフセットの活用:排出量を相殺するために、森林保護や炭素クレジットの購入を行う。
5.エネルギー管理システム(FEMS)の導入:工場内のエネルギー使用状況を把握し、最適化することで無駄を削減する。
これらの方法を組み合わせることで、工場のカーボンニュートラル化を進めることができます。

1. 再生可能エネルギーの種類と活用方法
近年、持続可能な開発が求められる中、工場における再生可能エネルギーの導入が注目されています。再生可能エネルギーを活用することで、カーボンニュートラルの実現やコスト削減、環境負荷の軽減が期待できます。工場で取り組める代表的な再生可能エネルギーの種類とその実施方法について詳しく説明いたします。
1.太陽光エネルギー
太陽光パネルを設置して、太陽光を電気に変換する方法です。設置場所や規模に応じたシステムを構築できます。メンテナンスが比較的容易なこともメリットとして挙げられます。
実施方法
屋根設置型: 工場の屋根にパネルを設置し、自家消費を行います。
メガソーラー施設: 大規模な土地を借りて、メガソーラー発電所を建設することも可能です。
2.風力エネルギー
風の力を利用して発電する方法で、特に風が強い地域に適しています。但し、騒音や景観の影響が懸念されるため、入念に設置場所を検討する必要があります。
実施方法
小型風力発電: 工場の敷地内に小型の風力発電機を設置し、自家発電を行います。
大型風力発電所: 地域全体で風力発電所を構築し、共同利用する形もあります。
3.バイオマスエネルギー
廃棄物や植物由来の資源を燃料として利用する方法です。工場内で発生する廃棄物を有効活用することが可能です。
実施方法
バイオマスボイラー: 廃棄物を燃料としたボイラーを設置し、蒸気を生成します。
バイオガスプラント: 有機廃棄物を発酵させてバイオガスを生成し、発電に利用します。
4.地熱エネルギー
地中の熱を利用する方法で、適切な地理条件が必要ですが、安定したエネルギー源です。
実施方法
地熱ヒートポンプ: 地中熱を利用して暖房や冷房を行い、エネルギー効率を高めます。
地熱発電: 地熱資源が豊富な地域では、発電所を設立することも選択肢となります。
5.水力エネルギー
水の流れを利用して発電する方法です。大規模なダム型から、小規模なミニ水力まで様々です。
実施方法
小型水力発電: 工場近くの川の流れを利用して、小さい発電所を設置します。

2. 省エネ設備への切り替え
省エネ設備への切り替えは、カーボンニュートラル達成に向けた重要なステップです。以下では、カーボンニュートラルに貢献できる主要な省エネ設備について詳しく説明いたします。
1. 高効率照明
LED照明
LED(発光ダイオード)は、従来の蛍光灯や白熱灯に比べ、消費電力が大幅に少なく、長寿命です。
消費電力が減少するため、電力会社からの電力供給が必要な化石燃料の使用を減少させられます。
2. 空調設備
高効率省エネ型エアコン
エネルギー効率が良く、低GWP冷媒を使用している機種を選ぶことが重要です。インバータ制御やヒートポンプシステムを採用し、冷暖房効率の向上とエネルギー消費が削減されることで、温室効果ガスの排出量を低下させます。
3. 換気システム
エネルギー回収型換気システム
新鮮な空気を室内に取り入れながら、廃熱を回収して再利用するシステム。エネルギー効率が向上し、全体のエネルギー消費を削減できます。
4. 断熱材・窓
高性能断熱材
建物の断熱性を高める材料。外部の温度変化から室内を守ります。冷暖房にかかるエネルギーを削減し、温室効果ガスの排出量を減少させます。
低放射率ガラス(Low-E ガラス)
紫外線や赤外線を反射する特殊なコーティングが施されたガラス。エネルギー損失を最小限に防ぎ、冷暖房効率を向上させます。
5. 再生可能エネルギー設備
太陽光発電システム
太陽の光を電力に変換するシステム。家庭や企業の電力需要を自給自足できます。化石燃料に依存することなく、クリーンなエネルギーを供給します。
小型風力発電装置
風のエネルギーを利用して発電する装置。家庭や小規模施設向けに設計されています。再生可能エネルギーを利用することで、温室効果ガスを削減できます。
省エネ設備への切り替えは、カーボンニュートラルに大きく貢献します。高効率照明、空調設備、換気システム、断熱材、高性能ガラス、再生可能エネルギー設備を導入することで、エネルギー消費を最小限に抑え、温室効果ガスの排出を削減することができます。これらの設備の導入を検討することで、持続可能な社会の実現が推進されるでしょう。
3. CO2排出量の可視化
工場におけるカーボンニュートラル達成のためには、CO2排出量の可視化が重要です。適切な可視化手法を用いることで、排出量を正確に把握し、効果的な削減策を講じることができます。以下に、工場でのCO2排出量の可視化の具体的なステップを示します。
1.データ収集の準備
1.1 エネルギー消費のモニタリング
電力、ガス、蒸気、油などのエネルギー消費データを定期的に収集します。
各種計測器(スマートメーターなど)を導入すると、リアルタイムのデータ収集が可能です。
1.2 プロセスの分析
製造プロセスごとにCO2排出量を算出できるよう、各工程での入出力データを整理します。
機械の稼働時間や生産量、原材料の使用量などを把握する必要があります。
2.CO2排出量の計算
収集したデータから各プロセスでの排出量を計算し、全体の排出量を把握します。
3.データの可視化
3.1 グラフやチャートの作成
棒グラフや円グラフを使用して、部門ごとの排出量やエネルギー消費の割合を可視化し、比較しやすくします。折れ線グラフを利用して、時間経過に伴う排出量の推移を示します。
3.2 インタラクティブダッシュボード
BIツール(Tableau、Power BIなど)を使用してダッシュボードを構築し、リアルタイムのデータを視覚的に表示します。エネルギーの使用状況や排出量を簡単に把握できるようになります。
3.3 GIS(地理情報システム)を利用
プロセスの地理的位置に基づき、排出量を地図上で可視化します。これにより、より効果的に地域のCO2排出量を管理できます。
4.利用者へのフィードバックとコミュニケーション
CO2排出量の可視化結果を定期的に報告書としてまとめ、関係者に配布します。これにより、従業員や経営層が持続可能な行動を理解しやすくなります。
特に成果が見られた場合や改善が必要な点を強調して、コミュニケーションを活発に促します。
5.目標設定と進捗管理
可視化によって得られたデータを基に、具体的な削減目標を設定します。
定期的に排出量を評価し、目標に対する進捗を管理します。
工場におけるCO2排出量の可視化は、データ収集、計算、可視化手法の選定を通じて行います。リアルタイムのデータを用いて目標を設定し、フィードバックを行うことで、カーボンニュートラルへの達成はより現実的なものとなります。可視化を通じて、全ての関係者が環境への影響を意識し、持続可能な行動につなげることが期待されます。

4. カーボンオフセットの活用
工場におけるカーボンオフセットは、二酸化炭素(CO2)やその他の温室効果ガス(GHG)の排出を削減するための重要な手段の一つです。カーボンオフセットとは、自社の排出量を超える温室効果ガスを他の場所で削減または吸収することによって、相殺することを指します。オフセットプロジェクトに投資することによって、風力や太陽光などの再生可能エネルギーの普及、森林の保護・再生などに資金を提供します。以下に、工場でのカーボンオフセットの具体的な活用方法について説明します。
カーボンオフセットの対象プロジェクト例
●再生可能エネルギープロジェクト
・風力発電:風力発電所の設置に投資したり、その電力の供給を通じて排出量を減少させます。
・太陽光発電:地域コミュニティや他の企業との共同プロジェクトとして太陽光発電に出資します。
●森林保全プロジェクト
・植樹活動:森林を保護したり、新たに植樹を行うことによって二酸化炭素を吸収するプロジェクトです。
・持続可能な森林管理:伐採活動を行う場合、持続可能な管理技術を使用して情報と資金を提供します。
●メタン削減プロジェクト
・農業や廃棄物管理:メタンの排出量を削減するため、農業や廃棄物処理施設に投資し、バイオガスの回収や利用を促進します。
カーボンオフセットを活用するメリット
●環境負荷の軽減
排出量の相殺:自社の排出量を減少させることができるため、環境への影響を軽減できます。
●ブランドイメージ向上
サステナビリティの強調:カーボンオフセットに取り組むことで、環境に配慮した企業であることをアピールでき、消費者やビジネスパートナーからの信頼を得ます。
●法的要件への対応
規制の順守:一部の地域ではカーボンオフセットが法的要件として求められているため、これに対応することが重要です。
取り入れる際の注意点
1.信頼性の確認
・認証制度の利用:カーボンオフセットプロジェクトは、他の機関によって認証されたものを選ぶことが大切です。この認証により、実際に効果的なプロジェクトであることが保証されます。
2.内部削減とのバランス
・総合的なアプローチ:カーボンオフセットを利用する際は、排出量削減の努力を最優先として行い、オフセットは補完的な手段として使用することが重要です。
具体的な実施方法
・オフセットプロジェクトへの投資:企業としてどのプロジェクトに投資するかを選定し、資金提供を行います。
・社内教育・啓発活動:従業員やステークホルダーに対してカーボンオフセットの重要性を認識させ、行動を促すための教育を実施します。
工場におけるカーボンオフセットの活用は、環境への影響を軽減し、企業の持続可能なイメージを強化するための重要な取り組みです。信頼性のあるオフセットプロジェクトに投資し、内部での排出削減と併せて活用することが、効果的なカーボンニュートラルの達成に繋がります。さらに、社内での啓発活動を通じて、全ての関係者が環境保護に努める意識を高めることが大切です。

5. エネルギー管理システム(FEMS)
エネルギー管理システム(FEMS:Factory Energy Management System)は、工場や製造業においてエネルギーの使用状況を効率的に管理し、最適化するためのシステムです。FEMSは、エネルギーコストの削減、環境負荷の軽減、持続可能な生産を実現するために重要な役割を果たします。以下に、FEMSの概要、機能、利点、導入の手順などを詳しく説明します。
- FEMSの基本的な概要
FEMSは、企業の施設内で使用される電力、ガス、水などのエネルギーを総合的に管理するシステムです。主に以下の機能を提供します。
・データ収集: 各種エネルギーの使用データを集めて分析します。
・モニタリング: エネルギーの使用状況をリアルタイムで監視します。
・アナリティクス: データを基に効率化の提案や、異常検知を行います。
- FEMSの利点
FEMSを導入することにより、以下のような利点が得られます。
コスト削減: エネルギー効率が向上することで、光熱費の削減につながります。
環境への配慮: エネルギー使用量を減少させることで、二酸化炭素の排出も抑制できます。
運用効率の改善: エネルギーの使用状況を把握することで、設備の最適な運用が可能になります。
- FEMSの導入手順
FEMSを導入する際の基本的な手順は以下の通りです。
①現状分析: 現在のエネルギーの使用状況を調査し、改善点を明確にします。
②システム選定: 企業のニーズに合ったFEMSを選定します。
③導入計画策定: 導入の目的、スケジュール、必要なリソースを計画します。
④システム導入: 実際にFEMSを導入し、データ収集を開始します。
⑤定期的な評価: 効果を検証し、必要に応じて改善を行います。
FEMSは、コスト削減や環境への配慮など、多くのメリットをビジネスにもたらします。そのため、エネルギー管理の重要性が高まる中で、FEMSの導入を検討することは非常に意義深いと言えるでしょう。エネルギー効率を最大化し、持続可能なビジネスを実現するための一歩として、FEMSの導入をお勧めいたします。
まとめ
カーボンニュートラル達成のための方法についてお伝えしましたが、いかがでしたでしょうか。これらの方法を組み合わせることで、工場においてカーボンニュートラルを達成する道筋を築くことができます。環境への配慮は、企業の社会的責任としてますます重要視されているため、この取り組みはビジネス戦略にも大きな影響を与えることになるでしょう。持続可能な未来を見据えた工場経営が、今求められています。

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