2026.07.15
熱中症にならない水分補給とは?
7月も中旬に差し掛かり、暦上では「小暑」にあたります。いよいよ夏本番の本格的な暑さが始まりました。製造現場における暑さは熱中症リスクや作業ミス、長期的な健康被害につながる重要な労働安全衛生の課題です。特に熱中症については、2025年6月より企業の熱中症対策が義務化され、熱中症予防を企業レベルで取り組んでいく必要があります。熱中症対策で重要なのが水分補給です。しかし、単に水を飲んでいれば大丈夫という訳ではありません。特に、工場や倉庫などで作業される場合、労働環境や作業の負担によっては通常の水分補給では適切に熱中症を防ぐことが難しくなります。本コラムでは、現場で特に重要な熱中症対策(水分補給の重要性、適切な方法、飲料の選び方など)について詳しく解説いたします。
熱中症対策に大切な要素
熱中症対策に大切なことは、普段からの体調管理です。栄養バランスの良い食事、質の良い睡眠、適切な運動(暑熱順化)を基本として行うことで、体温調節などの身体機能の健全化につながります。それに加えて、こまめな水分補給と身体冷却も大切です。汗をかくと、身体からは体液が失われます。脱水状態にならないように水分補給することが必要です。
水分補給の大切さ
人の体は、成人で体重の約55〜60%が水分で占められています。水分補給は、体温調節、栄養素の運搬、老廃物の排出など、生命維持に欠かせない役割を果たします。体内の水分が不足すると、熱中症や脱水症状だけでなく、脳梗塞や心筋梗塞のリスクも高まるため、こまめに摂取することが重要です。
工場は外気だけでなく製造機械・炉など内部の熱源や遮熱が弱い折板屋根などにより室温が高くなりやすく、発汗による体内水分・電解質の喪失が急速に進むため、熱中症のリスクが高まります。発汗で失われるのは水分だけでなくナトリウムやカリウムなどの電解質であり、これらが不足すると体温調節や筋肉機能、循環動態が破綻しやすくなります。そのため、「喉の渇き」を感じる前にこまめな補給が必要です。
また、2025年6月の法改正により、事業者は職場での熱中症対策(体制準備・手順作成・周知)を義務化されており、水分・塩分補給の管理(記録や常備)も求められているため、企業責任として対策を講じる必要があります。

適切な水分補給の方法
基本的な考え方として、「のどが渇く前に」「こまめに」「水分と塩分を同時に」補給することが大切です。作業の前・最中・後のルーティンを作ると実行しやすくなります。また、休憩や給水のルールを明確化し、管理者が確認・記録する運用(チェックリストや給水記録)を導入することで実効性が高まります。
補給量については、日常の水分補給の目安として成人で1日約1.2〜1.5L程度とされていますが、工場などの多汗環境では作業中にコップ1杯(約150〜200ml)をこまめに摂ることが推奨されています。補給頻度については、高い発汗量が見込まれる作業では、短時間ごと(30分〜1時間ごと)に小分けで摂る運用を設定したり、作業強度やWBGTに応じて休憩と給水間隔を短くすることが推奨されています。
事業所での管理運用のポイントとしては、自販機設置や給水ステーションの整備、冷えた飲料の常備、塩・飴や塩タブレットの配布などで「いつでも」「すぐに」補給できる環境を整備する必要があります。また、管理者が給水の実施を定期チェック表で確認したり、熱中症警戒アラート発表日の特別運用を定めることで休憩頻度の増加などを図ることで安定した運用ができます。
<作業前・作業中・作業後の具体行動例>
●作業前:開始30分前にコップ1杯の水またはイオン飲料を飲み、脱水予防の下地を作る
●作業中:のどの渇きを待たずに定期的に水分と塩分を補給する。屋内高温下ではスポーツドリンクや塩タブレットの併用を行う(後述の選び方参照)
●作業後:終了直後に水分と軽い電解質補給を行い、帰宅前に十分な水分摂取と休息を促す。酷い発汗や倦怠感がある場合は経口補水液の使用を検討する

水分補給の選び方や基準
作業状況(汗の量・作業強度・WBGT)と個人の健康状態(降圧剤や塩分制限など)に応じて飲料を選ぶことが重要で、企業は製品のナトリウム濃度や添加物を確認して配付する必要があります。
推奨される飲料と用途については以下の通りです。
■ミネラルウォーター(常時・軽作業時)
のどの渇きや軽度の発汗時の補給に有効。常備の基本飲料として適する。
■ノンカフェイン飲料(喉の渇き対策)
カフェインには利尿作用があるため、特に大量に飲むことが想定される場面ではノンカフェインの麦茶・ミネラルウォーター等を選ぶのが懸命である。
■スポーツドリンク(中〜高発汗時の予防)
ナトリウム・カリウム等の電解質を含み、体内への吸収を考慮して設計されているため、長時間や高発汗時の予防補給に適している。厚生労働省の目安として100mlあたり食塩相当量0.1〜0.2g(ナトリウム40〜80mg程度)を参考に選ぶと良い。ただし飲みすぎると糖分過多となる可能性もあるため、飲む量には注意が必要。
■塩タブレット・塩飴(即時の塩分補給)
屋外作業や大量発汗時に手軽に塩分を補給できる。飲み物と一緒に摂取する。
■経口補水液(脱水症状・回復期)
倦怠感・めまい・嘔吐等の脱水症状が疑われる場合は経口補水液を使用するのが推奨される。ただし日常予防目的で常用するのは推奨されないため、用途を分けて運用する。
プレクーリングの推奨
プレクーリングとは、作業開始前に身体の深部温を下げ、作業中の熱負荷到達を遅らせることで熱中症リスクを減らす事前対策です。屋外や高温環境などでの負荷軽減策として有効で、近年注目されています。プレクーリングの方法は以下の通りです。
<プレクーリングの具体的手法>
●手・足を冷やす
手のひらや足の裏には「AVA血管(動静脈吻合)」と呼ばれる体温調節のための特殊な血管が通っている。10〜15℃程度の冷水に10分ほど手足をつけるか、保冷剤を握ることで、冷やされた血液が全身を巡り、体温上昇を抑えられる。
●短時間の冷房空間での待機
作業開始前に冷房の効いた休憩室で10〜20分程度過ごすことで体温を下げ、作業初期の熱負荷ピークを緩和する。企業側は作業開始前に「プレクーリングルーム」や冷却ステーションを用意することが望ましい。
●保冷ベストや冷却ベストの着用
保冷剤を入れるベストや保冷材併用の空調服などを着用して出力直後の体温上昇を抑える。交代作業や高負荷の工程で有効である。
●冷水の摂取
作業前に冷たい水やイオン飲料をコップ1杯程度飲むことで、体内温度を若干下げつつ水分補給も同時に行う。
●アイススラリーの摂取
細かい氷の粒子が液体に分散した状態の飲料「アイススラリー」を活動前に飲むだけで、効率よく深部体温を下げることができ、その後の体温上昇を抑制する。
アイススラリーとは?
アイススラリーは、微細な氷の粒子が液体の中に分散した状態の飲料です。通常の氷のように固形ではないため流動性が高く、摂取すると喉から食道、胃や腸へ広範囲にわたって貼りつきながら流れ込んでいきます。さらに、通常の氷に比べ結晶が小さく、氷が水へと状態変化する際には外部から熱を吸収するため、ただの冷水よりも短時間で高い冷却効果を発揮します。

アイススラリーが注目される理由
アイススラリーの大きなメリットは深部体温を下げられることです。深部体温とは、体の内部の温度のことで、直腸や食道で測定できます。深部体温は平常時は約37℃で維持されるように調整されていますが、暑さなどにより38.5℃に達すると脳の温度上昇や血流量の減少が起き、認知・判断機能の低下などの障害が起こります。これは単に作業効率を落とすだけでなく、重大な労働災害に直結する危険な状態を引き起こします。
深部体温を下げることのメリットはもう一つあります。それは、脱水リスクの軽減です。深部体温の上昇を抑えることで、体温を下げようとする過剰な発汗が抑えて体内の水分損失を減らし、脱水を予防することができます。以上のような効果が実証されているため、アイススラリーは新たな熱中症対策グッズとして注目されています。


まとめ
工場や工事現場では、構造的に高温になりやすいため水分補給は単なる推奨事項ではなく、従業員の健康維持・業務継続・法令遵守の観点から必須の対策です。「こまめな水分と塩分の補給」「作業前のプレクーリング」「適切な飲料の選択と管理」の3点を軸に、管理者による環境整備(給水設備・記録・教育)と個人の行動を組み合わせて運用することが最も効果的です。具体的措置例としては、冷水・スポーツドリンク・塩タブレットの常備、給水記録表の導入、プレクーリングルームの設置、WBGT監視に基づく休憩ルールの運用、教育訓練の定期実施などがあります。現場の実情に合わせて計画されることをお勧めします。万全の準備・対策をして、暑い夏を乗り切りましょう!
<参考資料>
厚生労働省 熱中症ガイド:予防法
https://neccyusho.mhlw.go.jp/download/assets/pdf/guide_pdf03.pdf
西川産業では、暑さ対策商品の販売から暑熱対策工事施工まで幅広く対応しております。
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