近年、少子高齢化が進む中で、60歳以上の高年齢労働者が職場において活躍する機会は年々増加しています。しかしながら、加齢に伴う身体機能の変化により、転倒、腰痛、熱中症といった労働災害のリスクも高まっています。こうした状況を踏まえ、高年齢労働者の安全衛生を確保し、働きやすい職場環境を整備することを目的とした「エイジフレンドリー補助金」が設けられています。本補助金は、厚生労働省が所管しており、令和8年度においては予算額も拡充され、より活用しやすい環境が整っています。本コラムでは、「令和8年度エイジフレンドリー補助金」の概要と補助対象となる各コースの内容を詳細に解説いたします。
目次
背景と目的
2026年4月1日に労働安全衛生法が一部改正され、すべての事業者に対し60歳以上の高年齢労働者の労働災害防止措置が努力義務となりました。事業者は、安全衛生管理体制の確立や、職場環境の改善を行う必要があります。厚生労働省は、2023年4月に始めた第14次労働災害防止計画の中で高年齢労働者の労働災害防止対策の推進を重点項目としていますが、エイジフレンドリーガイドラインに沿った対策を講じる事業場を2027年までに50パーセント以上とする目標を掲げています。これにより、60歳以上の死傷者数の増加に歯止めをかけることを狙っています。そしてこの取り組みを推進する補助事業として、エイジフレンドリー補助金が用意されています。
補助金の概要
「令和8年度 エイジフレンドリー補助金」の概要は以下の通りです。
【対象事業者】
・1年以上事業を実施している中小企業
・役員を除き、自社の労災保険適用の高年齢労働者(60歳以上)が常時1名以上就労していること
【申請期間】
補助金申請受付期間:令和8年5月20日(水) ~ 10月31日(土)
ただし、専門家総合対策コースの第1段階の申請期限は8月31日(月)となります。
※予算額に達し次第、早期に終了する場合があります。
補助対象コース
令和8年度のエイジフレンドリー補助金では、主に以下の3つのコースが設けられています。これらのコースは、それぞれ補助対象となる取り組みや補助率、上限額が異なります。
Ⅰ. 専門家総合対策コース
職場環境の改善や運動指導など、高年齢労働者の安全衛生確保に向けた総合的な取り組みを支援します。
Ⅱ. 熱中症対策コース
暑熱な環境下での熱中症予防対策として、身体機能の低下を補うための設備や機器の導入を支援します。
Ⅲ. コラボヘルスコース
事業者と医療保険者が連携し、労働者の健康保持増進に取り組む活動を支援します。
以下より、それぞれのコースについて詳しく解説いたします。
Ⅰ. 専門家総合対策コース(職場環境改善・運動指導等)
本コースは、第1段階(リスクアセスメント)と第2段階(対策実施)に分かれています。
<第1段階>
A. 労働安全衛生に係る専門家によるリスクアセスメントの実施
補助対象: 高年齢労働者の特性に配慮したリスクアセスメントの経費
補助率: 4/5
上限額: 100万円(消費税を除く)
申請期間: 令和8年8月31日まで
※外部専門家ではなく、自社担当者によるリスクアセスメント実施で、第2段階からの申請も可能です(その場合、第1段階の申請は不要)。
<第2段階>
B. リスクアセスメント結果を踏まえた高年齢労働者の身体機能の低下を補う設備・装置の導入その他労働災害防止対策
補助対象: 設備・装置の導入、その他労働災害防止対策に要する経費(熱中症対策は除く)
補助率: 1/2
上限額: 100万円(消費税を除く)
具体的には以下のような取り組みが対象となります。
●転倒・墜落災害防止対策
・段差解消
・防滑性能の高い床材・グレーチングの導入
・凍結防止装置の設置
・階段への手すり設置
・高所作業台(自走式を除く、高さ2m未満)の導入
●重量物取扱い・介護作業における労働災害防止対策
・作業台の導入
・重量物搬送機器・リフト(乗用タイプ除く)の導入
・アシストスーツ(パワーアシストスーツ)の導入
●その他の労働災害防止対策
・業務用車両への踏み間違い防止装置の導入

<第2段階>
C. リスクアセスメント結果を踏まえた高年齢労働者を含む全ての労働者の転倒防止・腰痛予防のための運動指導等
補助対象: 専門家等による身体機能のチェック及び運動指導等に要する経費
補助率: 1/2
上限額: 100万円(消費税を除く)

Ⅱ. 熱中症対策コース
補助対象: 暑熱な環境による熱中症予防対策として身体機能の低下を補う装置・装備の導入
補助率: 1/2
上限額: 100万円(消費税を除く)
具体的には以下のような設備・機器が対象となります。
●体表面の冷却を行うための機器、体温を下げる機能のある服や装備
・冷却機能付き作業服(空調服等)
・冷却ベスト
●作業場または休憩場所に設置する移動式のスポットクーラー
・熱排気を屋外等へ逃がすことができるもの
・標準使用期間が5年以上のもの
※固定式エアコン、工場扇、送風機、サーキュレーターなどは対象外
●効率的に身体冷却を行うために必要な機器
・アイススラリーまたは保冷剤を冷やすための専用の冷凍ストッカー(最大400Lまで)
※アイススラリー、スポーツドリンク、保冷剤そのものは対象外
●健康管理システム
・熱中症の初期症状等の体調の急変を把握できる小型携帯機器(ウエアラブルデバイス)による健康管理システムの導入。
・使用者本人のみに通知があるのではなく、通信機能により集中的な管理ができる機能を備えるもの。
・熱中症に関する異常を感知することを目的とし、深部体温を推定できる機能を有するものに限る。



Ⅲ. コラボヘルスコース
補助対象: 労働者の健康保持増進のための取組(健康診断結果のデータ提供を含む)
補助率: 3/4
上限額: 30万円(消費税を除く)
具体的には、以下のような取り組みが対象となります。
●健康教育・研修等
・健康診断結果等を踏まえた禁煙指導、メンタルヘルス対策等の健康教育、研修等。
・産業医、保健師、精神保健福祉士、公認心理師、労働衛生コンサルタント等によるもの。
●システム導入
・健康診断結果等を電磁的に保存・管理し、事業所カルテ・健康スコアリングレポートの活用等によりコラボヘルスを推進するためのシステムの導入(初期経費のみ対象)
●栄養・保健指導
・栄養指導、保健指導等の労働者への健康保持増進措置(対面実施に限る)

| コース名 | 補助対象となる取組 | 補助率 | 上限額 (消費税を除く) | 備考 |
| I 専門家総合対策コース (第1段階と第2段階に分かれた申請となります) | 【第1段階】 労働安全衛生に係る専門家によるリスクアセスメントの実施 | 4/5 | 100万円 | ※自社の安全衛生担当者による実施、かつ第2段階からの申請も可能(その場合、第1段階の申請は不要) ◆申請期限: 令和8年8月31日 |
| 【第2段階】 リスクアセスメント結果を踏まえた高年齢労働者の身体機能の低下を補う設備・装置の導入その他労働災害防止対策(熱中症対策は除く) | 1/2 | 100万円 | – | |
| 【第2段階】 リスクアセスメント結果を踏まえた高年齢労働者を含む全ての労働者の転倒防止・腰痛予防のための運動指導等の取組み | 1/2 | 100万円 | – | |
| II 熱中症対策コース | 暑熱な環境による熱中症予防対策として身体機能の低下を補う装置・装備の導入 | 1/2 | 100万円 | – |
| III コラボヘルスコース | 労働者の健康保持増進のための取組(保険者への健康診断結果のデータ提供を含む) | 3/4 | 30万円 | ※メンタルヘルス対策は健康スコアリングレポート等に基づく他の健康教育等とセットでの申請が必要 ※腰痛予防を目的とした運動指導は別コース(I)で申請 |
まとめ
「令和8年度エイジフレンドリー補助金」は、高年齢労働者の安全衛生確保、労働災害防止、そして健康保持増進に資する幅広い取り組みを支援する制度です。専門家総合対策コース、熱中症対策コース、コラボヘルスコースの各コースにおいて、具体的な設備導入や専門家による指導、健康増進活動などが補助対象となります。
補助金の活用をご検討の際は、課題や目的に合ったコースを選定し、申請期間や必要書類などを事前に十分に確認した上で、早めの準備を進めることが重要です。当社までぜひお気軽にご相談ください。
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